2010年07月24日

医療法人出資評価をめぐる最高裁判決

最高裁が今年4月に続き、医療法人の出資評価について、原判決(東京高裁)を破棄し、

財産評価基本通達のオーソドックスな評価方法を指示する判断を下しました。

医療法人の出資評価につき、基本財産と運用財産とに分割し、分配可能な運用財産が

債務超過であるため、贈与税算定上ゼロであるという納税者主張が認められていた事案

です。


最高裁は、ある時点の定款の定めで払い戻しを受ける対象が財産の一部に限定されると

しても、定款変更によって払い戻しを求め得る潜在的可能性があるとして、納税者の主張

を退けました。

また、定款の払い戻しを禁止する規定が、再度変更されることを禁じられておらず、さらに

基本財産と運用財産との区分を変更する定款変更も禁じられていないことが、上記判断

を裏付けることになりました。

高裁判決が下された当時から、納税者の恣意によって課税対象を限定できることに、違和

感を持つ専門家も多かっただけに、妥当な判断ではないかと感じます。

判決では補足意見として、原判決のような考え方では「課税の公平を欠く結果にならざるを

得ない」との意見も付されています。


ほぼ同時期に、東京高裁において、出資社員が退社した場合に「返還」を請求することが

できるという定款の文言を、「出資した額を限度とする返還」と解する判断が下されていまし

たが、これも今年4月の最高裁判決で覆されています。

同最高裁判決では、「同様の定款を規定している医療法人の多くの出資者に予期せざる

不利益を及ぼすおそれがあり著しく法的安定性を害する」との補足意見も付けられました。


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2010年07月10日

医師の必要経費をめぐる審判所裁決

医師の中元の必要経費性や、妻の青色専従者該当性について争われていたケースで、

医師の主張を認める国税不服審判所の裁決が下されました。


中元の送り先は、開業医、総合病院・大学の勤務医、レントゲン技師、院外薬局関係者

等であり、医師の医療業務を円滑に行うことを目的としているため、必要経費に算入する

ことが相当との判断を裁決所は下しました。

そもそも、調査時点で問題の発生し得ない事案であると考えますが、税務調査において

贈答の目的が明確にされなかったことが、課税庁処分の原因であったそうです。


また医師の資格を有する妻の専従者給与について、診療の事実やカルテ記載の事実も認

められ、同規模クリニックに医師として従事する青色専従者の給与と比較して、相当な額と

認められるため、必要経費性を認めるとの審判所の判断も下されました。

ただし、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した金額を超える部分については、

必要経費としない旨の判断も下しています。

医師の資格をもち、勤務実態も確認できる妻の青色事業専従者の該当性が問題となること

自体が我々の理解の範囲を超えるところです。

裁決書によれば、医師の側が調査時点において、「労務の対価として客観的に認識できる

程度に主張、立証をしなかった」のが課税庁処分の原因であったそうですが、対価として

不相当との立証責任はあくまでも課税庁側にあるため、処分に至るまでの課税庁の詰めの

作業に問題があったものと考えます。


当然の判断が下されただけという印象の事例ですが、同時に課税庁処分の不可解さが際だ

つ事例でもあります。
  
 
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2010年07月06日

最高裁、年金部分への課税を「二重課税」と判示

相続税と所得税の二重課税が焦点となり、注目を集めていた訴訟の判決が、今日、

最高裁で下されました。 納税者の逆転勝訴判決です。


夫の生命保険契約に基づき、一部を一時金として、残りを年金として受け取った妻が、

その年金部分についても所得税を課せられるのは「二重課税」であるとして、課税の

取消を求め、一審納税者勝訴、二審で敗訴となっていた事案でした。

最高裁は、相続財産には所得税を課さないとした所得税法の規定について、 「同じ

経済的価値に対する二重課税を排除する趣旨」であると解釈したうえで、対象となった

所得税課税を明確に「二重課税」と判示しました。


福岡高裁の、年金は年金受給権とは法的性格を異にし、被相続人の死亡後に支分権

に基づいて支給されるものである、したがって二重課税には該当しないという判断は、

通常の保険契約当事者の認識からも乖離し、とうてい説得的なものとはいえなかった

ため、今回の判決は至当なものと考えます。


今後は、数百万件あると言われる同種の契約について、過去の課税済み分の「更正の

請求」はもちろんのこと、生命保険会社の実務上の対応など、最高裁判決に伴う大きな

動きがあるものと予想されます。


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2010年06月30日

相続財産としての同族会社貸付金

被相続人が同族会社に対して貸し付けていた金額は、貸付金として相続財産を構成

します。相続税負担が発生する可能性のある納税者にとっては注意を要する点です。

清算所得の財産法による課税方式が、今年10月から撤廃されることからも、ますます

消しづらい相続財産となってしまいました。


しかし、この債権(被相続人から見て)の評価を、相続税申告において減額することは

可能でしょうか。

財産評価基本通達205は、「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき

においては」、債権の元本の価額に算入しないとしています。

この「回収が不可能又は著しく困難」というハードルは、同通達に列挙されているような

会社更生法・民事再生法の手続開始などと同様、客観的に検証可能なものでなければ

なりません。


最近の国税不服審判所裁決で、債権(相続財産)の一部が回収不能であるとする納税者

の主張に対して、審判所は 「債権回収の見込みのないことが客観的に確実であると言い

得る状況にあったとは認められない」という判断を下しました。


会社の帳簿に載った債権(被相続人から見て)は、よほどの特殊事情を説明できない限り

帳簿価額の財産とみなされる、そう考えておくべきでしょう。


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2010年06月24日

法人税率の引き下げに伴う課税ベースの拡大

現在のわが国の法人実行税率は約40%とアジア、OECD諸国との税率差が15%〜20%

に達しています。 消費税率の引き上げや所得税、資産税の負担増などが議論されるなか、

法人税率の引き下げが同時に議論されるのはやむをえないことでしょう。


実際、民主党が公約として掲げていた法人税の軽減税率(所得800万円までにかかる税率)

を12%まで引き下げるという政策は、平成22年度税制改正では取り入れられないまま現在

にいたっており、公約を果たすという観点からも法人税率の引き下げは当然の流れといえます。


他方、厳しい財政事情のなか、税率引き下げは同時に課税ベースの拡大を伴うと指摘されて

いますが、平成10年の税制改正で各種引当金の縮小、廃止を経てすでに削るべき税制上の

優遇措置も限られています。

そこで、現在課税ベースの拡大対象として指摘されているのが、支払利息の損金算入制限と

250%償却法などの減価償却制度の見直しです。


支払利息の損金算入とは、ドイツで実施されている制度で、税率の高い国で多額の借入を行う

一方、税率の低い国で投資を行うという行為につき、大企業に限って損金算入制限を課する

という制度です。

また、減価償却制度は平成19年度改正により導入された250%償却法などが、優遇のしすぎ

であるとして制限の対象となる可能性があります。


前掲のドイツの例などは当てはまりませんが、一般に税率の引き下げは大企業に有利に働き、

課税ベースの拡大は、さほど利益の上がらない中小企業に不利に働くとも言われています。

消費税率の引き上げとは異なり、法人税制の変更は来年度からの導入が見込まれますので、

中小企業の体力を削ぐことのないような配慮が必要とされます。


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2010年06月15日

粉飾決算法人の清算の税務

今年10月1日以降解散の法人に関しては、従来の財産法に基づく清算所得課税が

廃止となり、通常の損益計算による所得計算を行うことになります。

ただし債務超過の場合に関しては、青色繰越欠損金にとどまらず「期限切れ欠損金」

を控除して所得計算が可能であるため、従来の財産法で清算所得課税を免れていた

ケースのうち多くのものが、引き続き課税を受けることなく、クローズすることが可能と

なる見込みです。


しかし例えば「粉飾決算」を繰り返して、多額の架空債権をかかえたまま解散となった

場合には、「債務超過の場合」に該当せず、「期限切れ欠損金」すなわち別表五(一)

期首現在利益積立金額が赤字(△)になっておらず、これを差し引くことが原理的に

できない、という結果になります。

このような法人で、会社を生き長らえさせるための代表者借入金が多額に残っている

場合には、会社の債務免除益に対する課税が発生してしまいます。


直前期の粉飾による架空債権であれば、更正の請求によって正しい欠損金を改めて

計上することも可能でしょうが、それ以前に発生した架空債権を税務上も消し去る方法

としては「嘆願書更正」で税務署長の裁量に委ねることしか残されていません。


多額の債務免除益課税をさけるために解散もできず、個人財産としての会社貸付金が

相続財産としていつまでも残ってしまう、そういうケースが増加するものと考えられます。


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