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2008年04月30日

自社株の納税猶予制度の諸要件について

今年10月1日から遡って適用されることのみ決められており、その具体的な

内容について、平成21年度税制改正に下駄を預けられている自社株式の

納税猶予制度ですが、与党税調大綱に盛られている限りでの制度設計では

専門家の間で極めて評判の悪い代物となっています。


まず申告期限後5年以内に、納税猶予を受けた相続人が代表者でなくなる

など事業を継続していると認められない場合には、猶予された相続税額を

全額納付すべきとされています。 この事業継続要件のなかで、従業員の

80%以上の継続雇用 (大綱には記載されていませんが議論の詳細には

必ず言及されています) をどう見るかで、この制度が使えるものか否かが

大きく分かれます。


相続人の意思に因ることのない全くの不可抗力で要件から外れるような制度

ですと、制度の選択適用はただのギャンブルに過ぎません。

一方、相続人の意思によってコントロ−ルしうる要件ならば、たとえ経営継続と

いう観点からいかに不合理な要件であっても、それは相続人にとって選択肢が

増えることに変わりはありません。 あとは税負担軽減に優先順位を置くのか、

5年間でフレキシブルな制度改革を行う余地を残したいのか、という経営者の

意思によって選択を行うだけの話であると思います。


与党税調大綱に盛られた要件で、決定的に問題であるのは、この制度を適用

して自社株を相続した相続人は、生涯、莫大な相続税の追加納付を覚悟しなけ

れば、株式を譲渡できないという点です。

かりに譲渡を行った場合には、譲渡した株式の割合に応じて猶予された税額を

納付しなければなりません。

これでは、経済状況の変化などで、自社株を譲渡して他社の傘下に入るなどの

選択が望ましいなどというときに、譲渡価額の額によっては納税猶予の精算が

足かせとなって、身動きがとれなくなる可能性があります。


相続人が株式を譲渡する際の譲渡価額の範囲内で、納税猶予された相続税額

を精算できるなどの措置が必要ではないでしょうか。譲渡先に照らした譲渡価額

の適正性などは、納税猶予を解除する際に都度判断し、相続税以外でも調整を

図れるよう設計すればよいのではないかと考えます。


まず、納税者にギャンブルを強いるような制度は避けること、そしてかりに、制度

設計上、納税者の予測不可能な要素が避けられないならば、既存の相続税法上

の制度、例えば 「特定同族会社事業用宅地」 に対する評価減の特例などの従来

の使い勝手の良い制度にまで、改正の影響を及ぼさないように留意することが望

まれます。


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2008年04月24日

医療法人改革という政治判断

(前回からの続き)

以下述べることは、客観的な現状分析や予測とは全く別物です。

しかし政治的な文脈に置かれている事柄は、政治的なタームで

語られるべき、とも考えるのです。


身も蓋もない言い方をしてしまうと、医療法人制度改革とは、市場

原理の荒波から身を守るために、みずからを公益法人に「擬制」する

という、極めて政治的判断の濃い選択であったと思います。


医療法人改革において否定されるべきは、医療法人の株式会社化

であり、市場原理の過度の導入であって、決して経営の効率化まで

も否定し去った訳ではないはずです。


2025年問題といわれる、後期高齢者医療費の急激な負担増に対し

いかに効率の良い経営を行って資源の最適な配分を行うかという、

そもそもの問題に対しては、むしろ「株式会社化」に代わる案を提示

する必要があると考えます。

そして出資持分の相続税評価額が高く、相続税の負担に苦しむ法人

とは、概して効率の良い経営がなされている可能性が高いと言うことも

できると思います。

経営効率の良い法人に対する相続税負担の足かせを取り払うことで、

業界全体を、一層効率よく機能するよう再設計するという判断も、一連の

「政治的判断」のひとつとして矛盾しないと考えます。

過度の経済合理性の追求も排する代わりに、過度の垂直的な平等も

排するという選択と言ってもよいかもしれません。


当然、財務省の意向とは食い違うでしょうが、事業承継税制がまさに

動き出そうという時期に、厚労省等の「不作為」が許容されるのか、

翻っていままでの「政治的判断」は何だったのか、という思いが強く

するのです。

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2008年04月23日

事業承継税制の変質と医療法人

医療業界の税実務で有名な、青木恵一先生の講演を聴きました。

先生は来年度から導入が予定されている納税猶予制度に対する

医療法人の適用について、以下に述べる観点などからネガティブ

な予想をたてておられました。

平成19年度税制改正において、相続時精算課税制度が自社株に

ついて「拡充」されました。非課税枠が500万円上積みされただけで

適用要件が極端に厳しく、小規模宅地特例との併用ができないなど

全く使えない制度でありながら、ここに「事業承継税制の変質」を見て

取ることができる、というのです。

特例適用の場合、受贈者は4年以内に「議決権の50%超」を取得し、

なおかつ「当該会社の代表者」となっていることが必要とされます。

ここでは、事業承継税制の恩典を与える対象を、法人に対する支配権

(議決権)で判断し、なおかつ後継者を具体的に特定することを要件と

するという方向が打ち出されています。

一方で、医療法人の場合、医療法改正によって「1人1個」の議決権

しか認められなくなり、経過措置型医療法人の出資持分によって表わ

されるものは「財産権」であって、法人の「支配権」ではないために、

事業承継税制の基本的なスタンスからはずれてしまった、というわけ

です。

青木先生の見立ては、税務当局のアプローチを再確認する方法であり

将来の予測としては非常に説得的な考え方であると思います。

少なくとも、「財産権を原則的に否定された医療法人においては、その

財産権を前提とする、事業承継税制の手当は必要ない」 などとする

形式的な議論ではない重みがあると思います。

しかし、と思うのです。

今年10月1日に遡及して適用されることのみ決定し、その内実は

全く決定していないのが、自社株の納税猶予制度です。まさに

政治的決断の渦中に位置していることは言うまでもありません。

そして極めて政治的な決断として結論を見たのが、医療法人改革

ではなかったでしょうか。

(続きは次回)

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2008年04月17日

「当分の間」はいつまで続くか

「当分の間」という語が、とりわけ医療業界で最近話題になりました。

第5次医療法改正で、出資持分の財産権が保障される経過措置型

医療法人の存続を、「当分の間」認めるとの文言が、盛り込まれて

いたからです。

この当分の間を、どの程度の期間と見るか、5年なのか10年なのか

様々な憶測が流れましたが、厚労省等の説明で「半永久的と考えて

よい」という理解が浸透し、法改正の了解を得られた経緯があります。


この点につき税法学者のなかから、次のような例示で説明をされること

がありました。

相続税本法では、相続税の納税地は相続人の住所地とされている

にもかかわらず、相続税法附則第3項に「当分の間」被相続人の死亡

の時における納税地とするとされています。

この「当分の間」は昭和25年相続税法制定以来のことですから、

もう半世紀を優に超える期間が経過しています。

医療法改正における理解も、これを参考に考えてもよいのではないか、

という説明です。


しかしながら、現行法を改廃する立法措置がとられるまでの期間という

のが「当分の間」の正確な理解でしょうから、例えば相続税法の抜本

改正が行われるとすれば、「当分の間」はその時点で終了する可能性

があります。

「当分の間」の文言に期待される「半永久的」のイメージは、その時点で

大きく変わってしまうのかもしれません。

あくまでも「イメージ」の問題に過ぎませんが。


ただし遺産取得課税方式導入によって、相続人構成や遺産総額とは

関係なく税額が決まる制度に移行したとしても、実務上の問題として、

納税地を個々の相続人の住所とすることは難しいと考えられます。

つまり、相続時精算課税制度と相続税を確実にリンクさせる必要がある

うえに、贈与税との一体課税の可能性も考えると、おそらく現行通り

被相続人の死亡時の住所地を納税地とする制度設計にはなる

と予測されます

  
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2008年04月16日

犯罪収益移転防止法の施行

去る3月1日より「犯罪収益移転防止法」が施行され、マネーロ−ンダリング

対策として、不動産、預貯金、有価証券等の移転取引に当たり、本人確認、

取引記録の保存などの義務が、税理士など職業的専門家にも課せられ

るようになりました。

具体的に我々税理士に適用される業務としては、不動産の売買に関する

手続き、会社設立や合併に関する手続き、そして現預金、有価証券などの

管理処分に関する手続きなどですが、最後のものを除いて、司法書士さんに

依頼するケースがほとんどです。

まず我々の通常業務において、同法律の適用で書類作成、保存が義務づけ

られることは、まれなのではないかと考えられます。


同法施行以後に、司法書士さんの業務に立ち会わせていただいたことが

ありますが、それは厳格な手続きでした。

免許証等のコピーを受け取ったうえで、本人確認をし、氏名、住所、生年

月日の確認を、本人に返答してもらう方法で行います。そして本人確認を

行った方法、日付、作成者の氏名等を明記した記録を作成し、これを保存しな

ければなりません。

これは面識のある人であっても、犯罪にかかわる可能性がゼロと言っても

過言でもない人に対しても、もれなく確認および記録作成義務が生じるのだ

そうです。


今後、不動産取引等において、このような儀式めいた手続きを踏むことになり

ますが、法律の趣旨を理解して、ご協力をいただきたいと思います。


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2008年04月11日

相続税制改革と小規模宅地の特例

相続税制の抜本見直しの、そもそもの発端である納税猶予制度を盛

り込んだ 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案」

が、10日衆議院で可決され参議院に送付されました。


経済産業委員会の質疑で、甘利経産大臣は、相続税の抜本改正を

納税猶予制度の前提とは考えていない旨の答弁をしています。

また、相続税増税を懸念する質問に対しては、「円滑化法」の趣旨に

即した相続税制の設計を期待している旨、発言しています。


自社株の80%相当額の納税猶予については、特定居住用宅地や

特定事業用宅地について80%の評価減がなされていることとの対比

で、自社株についても相応の措置が取られるべし、との趣旨で議論が

始められた経緯があります。

「円滑化法の趣旨に即して相続税制の設計を行う」のであれば、特定の

相続人が、居住を継続する、ないしは事業を継続することを要件とする

「特定居住用宅地」や「特定事業用宅地」の特例は継続される

ことが期待されます

その一方で、現行の特定事業用資産の特例に見られるように、自社株

の納税猶予との間で、調整が施されることが考えられます。


ただし、それ以外の小規模宅地の特例、つまり誰が相続しても賃貸借

に供していた土地について評価減の恩典を受けられるなどの現行制度

については、納税者にとって不利益な変更となるかもしれません。


一方で当初の「事業承継」の文言が「経営承継」に入れ替わったことで、

納税猶予制度は「経営」に特化した手当であって、既存の小規模

宅地の特例には手が加えられないかもしれないとの見方もあります。


大臣答弁に見られるように、納税猶予が必ずしも相続税制の抜本改革と

セットではないのだとすれば、制度設計は充分に時間をかけて、拙速は

避けてもらいたいと考えます。


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2008年04月09日

相続税制改正における配偶者の取扱い

相続税が「遺産取得課税方式」に変更されることに伴う、影響に

ついて検討を重ねています。

今回は、配偶者が遺産を引き継ぐことによる影響について

述べてみたいと思います。


現行制度では「配偶者の税額軽減制度」が採用されており

配偶者が法定相続分か1億6千万円のいずれか大きい額まで

相続した場合には、相続税額はゼロとされてきました。


しかしながら、この制度は遺産の総額計算を行う過程で、全体

への軽減を図る目的で導入されているため、遺産取得の事実

に着目して課税する「遺産取得課税方式」では、同制度が維持

されるのは難しいのではないかと考えられます。


事実、戦後我が国で遺産取得課税方式が採用されていた際に

は取得した財産の2分の1が「配偶者控除」として控除されて

いたそうです。


こうしてみますと、新税制は相続において、配偶者が財産を取得

することに対しては「冷たい」制度といえるかもしれません。


自社株の納税猶予制度にしても、配偶者が後継者でない限り、

配偶者が自社株を引き継いでしまっては、納税猶予の特典を

享受することはできないからです。

   納税猶予制度の概要については弊事務所コラム
   H19年12月号参照 http://www.fc-tax.com/ 

相続税の制度設計は、財産の分割を誘導する側面があります。


納税者の分割の選択肢を極端に狭くしない、という観点からの

制度設計も期待したいと思います。


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2008年04月02日

遺産取得課税方式の税務調査への影響

導入が検討されている相続税制の「遺産取得課税方式」は戦後

シャウプ勧告に基づき、昭和25年から昭和32年まで、我が国に

おいて実施されました。

その際に問題になったのが、租税回避を狙って実際の遺産分割

とは異なり、あたかも相続人が平等に分割したかのごとく装って

申告するケースが後を絶たなかったということです。


そのため税務調査は相続財産の把握よりも、実際の遺産分割

と税務申告とが乖離していないか、に力点を置かざるを得な

かったという話も聞きます。


長子相続が当然であった戦後まもなくの国民の権利意識と今日

のそれとは比べものにならない差異が生じてはいるでしょう

そして、現実の分割よりも過大に申告し、多額の納税を負担する

インセンティブもさほど考えられないかもしれません。

従って、租税回避を誘発した過去の失敗は、今日においては杞憂

に過ぎないのかもしれません。


しかし、分割の仕方によっては全体の税負担が大幅に異なる事案

も発生するでしょうし、そうであれば分割を仮装した租税回避への

誘惑はなくなることもないでしょう。

税務調査においても、再び分割の実態把握に力点が置かれる

ものと思われます。代償金の支払い、とりわけ長期にわたる分割

支払などは、その実現可能性の観点などから厳しい調査対象となる

のではないでしょうか。

  
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2008年04月01日

遺産取得課税方式の節税策への影響

相続税制が「遺産取得課税方式」に変更されるとなると、具体的に

どのような影響が起こるのかについて、弊事務所コラム欄2月号

に予測を記載してみました。

 (弊事務所コラム欄はこちらからどうぞ)
   ↓ ↓ ↓
 http://www.amplan.net/fctax/column/column.html

今回は、より具体的にどのようなことが起こりうるのかについて、

生命保険を使った従来の節税策への影響に絞って述べてみたい

と思います。


まず、現行制度では生命保険を相続人のうち誰が受け取ろうと、

500万円に相続人の数を乗じた非課税枠が設けられています。

しかし、遺産取得課税方式では、誰が相続財産を受け取るのか

に着目して課税関係を決めるため、生命保険の受取人を特定の

相続人に限定すると、従来のような節税効果は望めないことが

予想されます。相続人4人であれば生命保険金2千万円を1人で

受け取っていても非課税であったケースが、たった500万円の

非課税枠しか使えないという事態が生じるからです。


節税スキームとしては、死亡保険金は均等に散らして受け取らせる

設計や、何らかのかたちで所得を少しずつ子世代に移行させ、

子を契約者、親を被保険者、契約者である子を受取人とするような

設計をして保険金収入を税負担の少ない「一時所得」とし、

納税資金を用意させるなどのかたちが考えられます。


制度の大幅改正という点で懸念されるのは、個人年金保険を利用

した従来の節税スキーム(相続税法24条の定期金に関する権利の

評価を利用した節税策)に大ナタが振るわれてしまうかもしれない

という点です。相続発生時の金利水準への変更などが行われてしまう

と、従来の節税商品のうま味がなくなってしまう可能性もあります。


あくまでも可能性があるという話ではありますが、今後は従来

の節税スキームの有効性について、改めて検討を加える必要が

あります。


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