医療法人出資に関する高裁判決(続)
(前回に引き続き、東京高裁判決の感想です)
法人独自の定款に拠って、その「運用財産」についてのみ払戻請求権等の
財産権を有する権利関係を築き、これにもとづいて出資評価を行った事案に
つき、東京高裁は次のようにも述べています。
法人財産を「基本財産」と「運用財産」とに区分し、その片方にのみ財産権を
認める定款は、法人の判断によっていかようにも変更しうると国は主張するが
そのような「抽象的な可能性」をもって、納税者の主張、立証を覆しうるもので
はない、と。
一切の文脈から離れて判断すれば、硬直した税務行政を指弾する名判決と
なるのでしょうが、このくだりも腑に落ちるように理解することができません。
第三者の多くが納得し得るような、権利義務関係を定めた定款であれば別段
ですが、 恣意性の高い判断にもとづく制度設計が行われていると考えられる
場合、「抽象的な可能性」を考慮に入れることがなければ、税務の公平な適用
を期待することはできないのではないか、と思います。
かりにこのような制度を選択することで、税務上の恩典を得ることができるので
あれば、このような制度を選択しない合理的な理由は、極めて小さいことになり
ます。
当該事案においては定款変更は「抽象的な可能性」の域を出ないのかもしれま
せんが、定款変更を前提に制度設計をする他の納税者が出現することは、高い
可能性を有すると言うべきでしょう。
突然変異種のような判決が下される一方、新医療法人類型への移行時課税は
いまだに明確でありません。 法人への贈与税課税や、受贈益課税は一定の
条件の下で免れるようですが、出資者に対する「みなし譲渡課税」や配当課税
については回避される様子もありません。
出口が見えず、原則から離れた議論がばらばらに行われているのが、医療法人
の税務の現状であると考えます。
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